繊維業界と海外の関わり
海外出張には、国内出張と同様に目的などによって様々な種類のものがあります。また、新型コロナ禍においてウェブ会議が一般的になり、業種によっては海外出張が激減している場合もあると思います。
私が属する繊維業界は、下記のような事情で、海外との関わりが多く、その分、海外出張の機会も多くあります。
- 日本の衣料品はその98%以上が海外で縫製されたものであり、サプライチェーンが海外に存在します。
- 大手スポーツアパレル顧客は欧米に本拠があるものが多いです。
- アパレルのトレンドは、欧州を中心に発信されることが多いです。
- エアバッグ、シートカバー、吸音材、シートベルト、内装材、タイヤコードなど自動車に使用される繊維製品は多く、納入先も世界中に存在します。
海外出張の種類
商談(経験あり)
大手スポーツアパレルなど国内以外にも顧客は多いですが、アパレル用途では、風合い(生地の触感)などから顧客に選択してもらう必要があり、それらはまだ遠隔では伝えられないため、スムーズな商談のために、まだ海外への出張はなくなりません。
生産(経験あり)
繊維そのものの製造拠点は、汎用のポリエステルは中国、タイなど、高性能繊維は欧米などにあります。新銘柄の立ち上げなどのため、出向く必要があったりします。
アパレル用途なら、縫製は従来の中国に加え、ベトナム、インドネシア、バングラデシュなどでされることが多いことは、服のラベルを見ると実感されるでしょう。それらの多くは外部委託工場ですが、その委託先の選定および生産管理のために現地に出向く必要があります。
工場監査(経験あり)
すでに生産を委託している工場を、品質保証などの担当者が訪問し、チェックリストに基づきチェックして継続して加工を委託してよいのか判断します。これはウェブ越しに確認する、というのが無理で、実際に見ないといけません。
品質トラブル(経験あり)
海外の顧客が多いと、それだけ品質トラブルの対応が多くなります。海外で実際に使用している現場に出向き、原因を調査したり、海外の自社工場に出向き、原因を調査したり対応したり、ということが必要です。
製造装置の購入検討(経験あり)
海外の設備メーカーに実際に材料を持ち込んで、試作してみるということが必要になります。
製造装置の導入(経験あり)
自社工場や外部委託先に対して、日本で使用実績のある設備を移管するなどするために現地に出向き、設置方法、使用方法を指導することがあります。
展示会(参加、出展ともに経験あり)
生地見本市「プルミエール・ヴィジョン(フランス)」などの大きなものから、小さなものまで海外で多く開催されており、情報収集や商談に出向いたり、逆に出展したりします。
講演会・学会(参加、発表ともに経験あり)
情報収集、対外アピールなどの目的です。
国際規格の制定(経験あり)
ある測定法に関するISOのワーキンググループに、日本の代表として参加していたこともあります。
社費留学(経験あり)
グローバル人材の育成や情報収集、新規商品の検討など、会社が期待することは多いと思います。
M&Aのデューデリジェンス(経験あり)
検討段階、成立の確度にもよりますが、最終的には決定権者(偉い人)、営業、技術、環境や労働安全衛生の状態を確認する人員なども現地を確認する必要があり、更にはM&Aコンサルなどが加わる一大チームが現地を訪問します。最終的に成立するまで口外できないので、私の場合、どの国に行ったかも周りに言わないようにしていました。
あと、こういうのもあります。
謝罪(経験あり)
謝るときはメールだけでなく、実際に会って謝り、誠意を見せるのが効果的なのは日本に限ったことではありません。私が経験したのは、自分たちの責任とは言えないまでも政治的に謝罪する形になり、最後は会食の写真を撮影して、「仲良しアピール」をして完了。その後のビジネスはスムーズに進みました。
接待(経験あり)
商談に付随した接待ではなく、接待目的のみでの出張、というのはなかないですが、欧州のパートナーが、「講演会開催」の元(実際、講演会は実施します)、会場のリゾート地に顧客を連れて行くのに同行したことはあります。それが広義の接待のための出張でしょうか。あと、もちろん、商談のために晩の会食などに誘うことはあります。
ある観光地に行ったとき、主目的は別にありましたが、やはり欧州のパートナー企業が家族を連れてきて、その方たちを案内しました。特に、パートナーメンバーの家族に対して、そのパートナーメンバーが自分たちにとって重要か、ということを示すことで、メンバーに心地よくビジネスに取り組んでもらうというのもビジネスを円滑に進めるのに役に立ちます。海外ではありませんが、パートナーメンバーの家族を京都の金閣寺とか二条城、広島の平和公園などに連れて行ったこともあります。
こう見ると、ほとんどのタイプの海外出張の経験がありますが、次のものはないですね。
表敬訪問(経験なし?)
「近くまで来たので寄りました」というものですね。ふわっとした「情報交換」の目的で訪問するもので、訪問先の時間を浪費することが多いので嫌われがちだと思います。
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